〜“死”ではなく、“生き方”を見つめるために〜
「エンディングノート」と聞くと、多くの人が「死を意識してから使うもの」だと思うかもしれません。
名前の響きからして、人生の終わりに備えるための、どこか重たい存在。
実際、私のまわりでもそうした印象を抱く方が多いと感じています。
けれど私は、少し違う捉え方をしています。
エンディングノートとは、“どう生きたいか”を見つめ直すためのノート──
そう思うのです。
ノートに向き合うことで、今まで自分が大切にしてきたことや、これからどんなふうに過ごしていきたいかを、静かに考える時間が生まれます。
それは決して「死を意識すること」ではなく、「今の生き方を確かめること」だと私は感じています。
渡すタイミングが、どうしても難しかった
私は、かつてエンディングノートを「渡せなかった」経験があります。
それは、終末期のがんと闘っていた60代の女性を担当していたときのこと。
彼女は独り暮らしで、飼い犬と一緒に静かに暮らしていました。
入退院を繰り返しながらも、「もう一度、あの公園まで散歩したい」「この子と桜を見に行きたい」と、生きる希望を語っていた姿が、今でも心に焼きついています。
その言葉の端々から伝わる、強くあたたかな生命力に、私自身も元気をもらっていました。
…だからこそ、迷いました。
そんな彼女に、エンディングノートを渡すべきかどうか。
“死”を意識させてしまうのではないか。
“もう先がない”という宣告のように受け取られてしまうのではないか。
悩みに悩んで、結局タイミングを逃してしまったのです。
飼い犬の行き先が決まらないまま…
彼女が旅立ったとき、飼い犬の行き先はまだ決まっていませんでした。
施設に入っていたわけではなく、自宅で亡くなられたことで、急遽、保健所に一時保護されることになってしまいました。
私はSNSや知人、保健師さんたちと協力し、なんとか新しい飼い主を見つけることができました。
でも、それでよかったのか、本当に彼女の希望に添えたのか――
今でも考え込んでしまうことがあります。
もし、エンディングノートに
「この子は○○さんにお願いしたい」
「ごはんはこのメーカーが好き」
と、一言でも書かれていたら。
もっとスムーズに、もっと安心して、バトンを渡せていたかもしれない。
そう思うたび、エンディングノートの“可能性”を実感します。
書くことは、“生きること”を支える
エンディングノートは、何も「死ぬ準備」だけのために書くものではありません。
むしろ、「いまをどう過ごしたいか」「これからの時間をどう生きていきたいか」を考えるきっかけになります。
- 誰に何を伝えたいか
- 何を大切にしているのか
- 自分が望む「これから」とは――
そういった思いを、言葉にすることは、まぎれもなく“生きること”そのものだと思うのです。
実際にノートを手に取ってみたいと感じた方は、
👉 [エンディングノートはどれを選ぶ?書きやすい一冊と中身のヒント]
を参考にしてみてください。市販や自治体で手に入るノートの違い、書きやすさの工夫、おすすめの商品などをまとめています。
「書いておけばよかった」と思う前に
もちろん、書く・書かないは自由です。
書かないまま旅立っても、悪いわけではありません。
でも、残された人の胸の中には、きっとこういう問いが残ります。
「本当は、どうしたかったのだろう?」
「誰に、何を伝えたかったのだろう?」
そして、その問いに答えられないまま、時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。
だからこそ、エンディングノートは “伝える手段” として、静かにそばにあるだけでいい。
書き残すことで、本人の気持ちが守られ、周囲の人も迷わずにすむ。
それが、ひとつの安心につながるのではないでしょうか。
正解がないからこそ、そっと背中を押せる存在に
エンディングノートに、決まった書き方はありません。
どんなふうに始めても、どこまで書いても、その人の自由です。
「もしもに備える」だけでなく、
「これからの人生をどう歩んでいきたいか」を形にする。
それが、エンディングノートのもうひとつの意味だと私は思っています。
このブログでは、これからも
終活を「生きること」として、一緒に考えていきます。
あなたにとって、“書いてみようかな”と思える瞬間が訪れたら。
そのときは、そっと一歩を踏み出してみてください。
次回予告
次回は、「エンディングノートの書き方」について、もう少し具体的に紹介していきます。
書くことに不安がある方にも、気軽に始められるコツをお伝えできればと思います。
👉 [エンディングノートはどれを選ぶ?書きやすい一冊と中身のヒント]
(再掲:気になった方はこちらからご覧ください)
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