聞こえづらさがもたらす影響
耳はちゃんと聞こえていますか?
年齢を重ねると、耳の機能は少しずつ衰えていきます。特に高齢になると「加齢性難聴」が増え、日常会話やテレビの音が聞こえにくくなります。最初は些細な違和感でも、聞き返しが増えたり、会話を避けるようになったりして、徐々に人とのつながりが減ってしまうこともあります。
聞こえづらさは心の距離を生み、孤立やうつ傾向、さらには認知症リスクを高める要因にもなるのです。
私の担当している利用者さんたちも、10人に7人くらいの割合で聞こえづらさの症状が出ていると感じます。
今回は耳の聞こえづらさについて書いてみたいと思います。
体験談:聞こえなくなるという喪失感
耳の聞こえが悪い利用者がいました。耳元で大きな声で話しても伝わりにくく、筆談でやり取りしていましたが、やがて視力も低下。
日課だった野球中継や新聞を読むことも難しくなり、外の世界とのつながりが急激に減っていきました。
次第に思い込みが強くなり、人間関係も悪化。デイケアに通っていても孤立し、認知機能の低下が進行していきました。献身的な家族のおかげで最期まで家で暮らすことができましたが、信頼している家族のことも信じられなくなってしまったのは、一人の世界に閉じこもってしまったことが大きな原因だったと振り返って思うところです。
「聞こえない」ということが、これほどまでに人を孤独にし、心を閉ざしてしまうのか――と、支援の難しさを痛感しました。
難聴の種類と原因
加齢や生活環境、病気など、耳の聞こえにくさにはさまざまな原因があります。
難聴は大きく分けて 「加齢性」「突発性」「伝音性」「感音性」 の4つのタイプがあり、それぞれで原因や対応が異なります。
■ 加齢性難聴(かれいせいなんちょう)
年齢を重ねることで、内耳にある「有毛細胞(ゆうもうさいぼう)」という音を感じ取る細胞が少しずつ減っていきます。
特に高音域(子どもの声や電子音など)が聞き取りにくくなり、「相手の声は聞こえるけど、何を言っているか分からない」と感じる方が多いです。
左右両方で少しずつ進行し、生活の中で気づきにくいのが特徴です。
補聴器を早めに導入することで、脳が音を認識する力を保ち、進行を遅らせることができます。
■ 突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)
ある日突然、片耳または両耳が聞こえづらくなる病気です。
原因ははっきりしていませんが、ウイルス感染やストレス、内耳の血流障害などが関係しているといわれています。
発症直後に耳が詰まった感じや、耳鳴り、めまいを伴うこともあります。
治療はステロイド薬や血流改善薬が中心で、発症から48時間以内に治療を始めることが極めて重要です。
「そのうち治る」と放置すると、聴力が戻らないままになるケースも少なくありません。早期受診が何よりの鍵です。
■ 伝音性難聴(でんおんせいなんちょう)
音が耳の奥までしっかり届かないタイプの難聴です。
外耳道(耳の穴)や中耳(鼓膜や耳小骨)に問題が起こることで、音の伝わりが妨げられます。
代表的な原因は、耳垢のつまり、中耳炎、鼓膜の損傷など。
多くの場合、治療で改善が見込める難聴です。耳掃除をしすぎて外耳を傷つけたり、綿棒を奥まで入れすぎたりするのは避けましょう。
■ 感音性難聴(かんおんせいなんちょう)
内耳や聴神経が障害を受け、音を感じ取る機能そのものが低下してしまうタイプです。
騒音の多い環境での仕事、薬の副作用、老化などが原因になります。
この場合、治療で完全に治すことは難しいですが、補聴器や人工内耳によって生活の質を改善できます。
また、耳の血流を改善する生活習慣(運動・睡眠・食事)を心がけることも有効です。
予防とケアのポイント
・イヤホンやヘッドホンの音量を控える
・耳掃除を奥までしすぎない
・大きな音や騒音を避ける
・糖尿病・高血圧の管理をしっかり行う
・年1回の聴力検査で早期発見
また、聞こえが悪いと感じたら、早めに補聴器を検討するのも大切です。
最近は目立たず自然なデザインのものも増え、装着するだけで日常の会話がスムーズになります。
👉 [老いを受け入れて、自分らしく生きるということ] の記事では、老いを前向きに受け止めながら暮らす姿勢について紹介しています。
Q&A:難聴と上手に付き合うために
Q1. 難聴は治るの?
原因によります。突発性難聴のように治療で改善するケースもありますが、加齢性難聴は完治ではなく「進行を遅らせるケア」が中心です。
ただし補聴器や環境調整で、聞こえのストレスを大きく軽減できます。
Q2. 補聴器はいつから使うべき?
「まだ大丈夫」と思っているうちに装着するのが理想です。早期から使うことで聞き取り能力が保たれ、装着への抵抗も少なくなります。
Q3. 耳鳴りが気になるときは?
ストレスや血流障害が原因の場合もあります。生活習慣の改善と並行して、耳鼻科での検査・治療を受けることをおすすめします。
Q4. 家族にできるサポートは?
正面からゆっくり話しかける、明るい場所で表情が見えるようにする、メモやジェスチャーを併用するなど、安心できる環境を作りましょう。
Q5. 難聴を放置するとどうなる?
会話が減り、社会的なつながりが薄れることで孤立が進みます。認知機能の低下につながることもあり、早期対応がとても大切です。
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まとめ
聞こえづらさは「耳」だけの問題ではなく、人との会話や心の健康にも関わります。
補聴器やサプリメント、定期的なケアを取り入れて、「聞こえる喜び」を取り戻しましょう。
そして何より大切なのは、**「聞こえにくさを我慢しないこと」**です。
早めの気づきと対応が、これからの人生をより豊かにします。
年だから仕方ないと諦めず、気になることがあればすぐ耳鼻科に受診しましょう。
行って損は何一つありません。


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